2026年4月、Cloudflare が新しい CMS「EmDash」を発表しました。
発表資料を読んで、率直に思いました。「これ、私たちが2月に組み上げた構成とほぼ同じです。」
構想が正しかったという確信と、わずかな悔しさが同時にやってきました。
私たちが自前で組んだ構成
ヘッドレス CMS(フロントエンドとコンテンツ管理を切り離す設計)+エッジ配信(世界中のサーバーから最速で届ける仕組み)という方向性は、2025年に構想しました。「WordPress のエコシステムを活かしながら、表示速度・セキュリティ・AI 操作性を最大化する」という目標に対して、この組み合わせが最適解だと判断したからです。
実際に構築・運用を開始したのは 2026年2月。自社サイト(dreamsound-ltd.com)を以下の構成で本番稼働させました。
- WordPress:コンテンツ管理(投稿・プロジェクト・メディア)
- WPGraphQL:WordPress のデータを API として公開するプラグイン
- Astro:フロントエンド(静的サイト生成フレームワーク)
- Cloudflare Pages:エッジ配信(世界300拠点)
- Cloudflare Worker:WP へのリクエストをプロキシ(中継)するサーバーレス関数
- Claude Code + MCP:AI エージェントが WordPress を直接操作するプロトコル
ヘッドレス構成にすることでフロントエンドと CMS を切り離し、Astro の静的生成でページを事前ビルド、Cloudflare のエッジから配信します。WordPress の管理画面は非公開 Origin に隠し、MCP 経由で AI エージェントが記事や投稿を操作します。
当時、社内でも「やりすぎでは」という声がありました。手で一から組み上げた構成でした。
Cloudflare が作った EmDash と並べてみる
EmDash の技術構成はこうです。
- TypeScript 製 CMS コア:Cloudflare Workers + D1(クラウド SQLite データベース)+ R2(オブジェクトストレージ)
- フロントエンド:Astro 6.0
- 配信:Cloudflare Workers(エッジ)
- AI 操作:MCP サーバー・CLI・Agent Skills がネイティブ対応
- プラグイン:独立した Worker で実行、マニフェスト宣言した権限のみ
並べると一目瞭然です。
| 私たちの構成(2026年2月〜) | EmDash(2026年4月発表) |
|---|---|
| WordPress(コンテンツ管理) | EmDash CMS コア(TypeScript) |
| Astro(フロントエンド) | Astro 6.0(組み込み) |
| Cloudflare Pages(配信) | Cloudflare Workers(配信) |
| MCP 経由の AI 操作 | MCP サーバーネイティブ対応 |
| 手動連携・自前設定 | フルスタック統合製品 |
違いは「Cloudflare がすべてのインフラを自前で持っている」という一点だけです。私たちは WordPress という外部 CMS と連携する形を取りましたが、EmDash は D1・R2・Worker でフルスタックを完結させています。
何が証明されたか
構想から約1年、実装からわずか2ヶ月で Cloudflare が同じ設計思想を製品として発表しました。これは私たちが選んだ方向性の正しさを示しています。
ヘッドレス CMS はスタンダードになります。 WordPress のプレゼンテーション層をフロントエンドフレームワークから切り離す設計は、もはや「先進的な選択」ではなく「当たり前の構成」になりつつあります。
エッジ配信はデフォルトになります。 Cloudflare Workers のエッジアーキテクチャ(世界300拠点)は、従来のオリジンサーバー中心の発想を根本から変えます。EmDash はこれを CMS のコア設計として組み込みました。
AI ネイティブな CMS 操作は次の標準になります。 私たちが Claude Code + MCP で実現している「AI エージェントが CMS を直接操作する」というワークフローを、EmDash は MCP サーバーとして製品の中核に据えました。
では、EmDash に移行するか?
今すぐではありません。
WordPress には15年以上のエコシステムがあります。プラグイン・コミュニティ・運用実績、そして私たちが培ってきたカスタムエンドポイントや MCP 連携のノウハウは、すぐには置き換えられません。
EmDash は現時点で v0.1.0 のプレビュー版です。Cloudflare 自身がフィードバックと OSS への貢献を募集している段階であり、本番運用を前提としたプロダクトではまだありません。プラグインの数、テーマの多様性、運用事例の蓄積——これらが WordPress に追いつくにはまだ時間が必要です。
1〜2年後に EmDash のエコシステムを見て判断する、というのが現実的な方針です。
構想が正しかったという確信
2025年に構想し、2026年2月に実装した設計を、Cloudflare が約1年後に製品として発表しました。自社でこのアーキテクチャを設計・実装してきたからこそ、EmDash の設計思想がどれだけ理に適っているかが実感としてわかります。
ヘッドレス・エッジ配信・AI ネイティブという3つの要素は、これからの WEB 制作の標準になります。私たちはそれを、製品が登場する前から実践していました。